カークパトリックの「4段階評価モデル」で研修後の効果測定を見直そう!
2023.10.24 (最終更新:2023.11.30)
カークパトリックの「4段階評価モデル」とは
研修後の効果測定の現状
企業にはさまざまな教育研修が用意されています。社員のスキルや能力が向上することは会社の発展に大きく影響するため、研修に力をいれる企業も少なくないと思います。では、研修を受けたことでどのような効果があったかしっかり把握できているでしょうか。HR総研が実施した人材育成「管理職研修」に関するアンケートによると、管理職研修を運営する上での課題として実施効果の測定ができていないと答えた企業が最も多く、全体の38%を占めていることがわかりました。
研修の効果がどのようにでているかを知ることは、研修の質の向上、経費の削減につながるため重要であると言えます。
この研修後の効果を可視化する方法として、カークパトリックの「4段階評価モデル」が注目されています。これは、アメリカの経済学者ドナルド・ L・カークパトリックが1975年に提唱した評価・測定方法のモデルで、アメリカでは約7割の企業が採用し、日本でも広く普及している方法です。
レベル1 reactions(反応)
レベル1では受講者の満足度を測ります。内容や難易度、講師への評価などを事後アンケートでとる手法が一般的です。これは、受講者の反応がすぐに把握でき、項目ごとでの評価も知れるため改善もしやすくなります。
レベル2 Learning(学習)
レベル2では受けた研修をどの程度理解しているかを測ります。理解度テストを研修後行うなどがこれに値します。研修前と後に行うことでどれほど知識やスキルが向上したかを確認することも可能です。また、レポートやロールプレイングを実施することでも測定できます。
レベル3 Behavior(行動)
レベル3では、研修で得た知識が実務に活かされているかどうかを測ります。具体的な測定方法として、上司へのヒアリングや受講者へのインタビューを実施することがあげられます。レベル1.2と違い研修後すぐに行うのではなく期間を開けてから実施するのがポイントです。
レベル4 Result(業績)
レベル4では研修結果が業績にどのように影響を与えたのかを測ります。これは研修前後の売上、顧客満足度、生産性、ROI指標の変化をみることで測定します。レベル3と同様、研修から一定期間開けてから実施します。
カークパトリックの「4段階評価モデル」実践
研修の効果測定における課題
評価レベルが高いほど研修の学びが実践できているという評価になります。しかし、評価方法の難易度は評価レベルが上がるほど高くなります。なぜならば、研修を実施する組織以外の職種の協力が必要であったり、成果との明確なつながりが見出せなかったりするからです。
そのため、多くの企業ではレベル1・2の測定にとどまることが多いのが現状です。できるだけコストや手間をかけずにレベル3・4を測定するにはどのようにすればよいのでしょうか。
効果測定のポイント
研修というのは一社の中でも数多く存在します。やみくもに高い評価レベルでの効果測定を行っていてはリソースが尽きてしまいます。研修をそれぞれ検討し、どこまでのレベルを求めるのか計画をたてた上で実施するのが効果的です。
例えば、営業部門の全社員に対してプレゼンテーション能力を強化する研修を実施したとします。この場合、上司が実際プレゼンテーションを行う場に参加をしたり、資料をレビューしたりすることでレベル3は測定をすることができます。また、レベル4についても研修前後の契約数やコンペの勝ち数を比較することで測定ができます。
では、全部署の新人を対象とした社会人マナー研修を行った場合はどうでしょうか。レベル3であれば協力を依頼する職場も増え、各職場によって評価にばらつきがでる可能性が考えられます。そのため、評価の質はあまり期待できません。また、レベル4においてもマナーがよくなったことが直接的に業績に反映したかどうか判断するのが難しいため営業部門の例と比べると難易度が高いことがわかります。
このように研修ごとに、かかわる部門の範囲、実施する場が多いかどうかなどをしっかり把握し、どのレベルまで求められるのかを見つめなおすことが重要です。また、2つ目の例のようにレベル3.4での測定が難しい場合でもレベル1・2の奥行を深めることで効果測定の質を上げることも可能です。
例えば、一問一答の暗記力を問うようなテストではなく、思考力を問うようなテストにすることや今後の行動計画を問うなどがこれに値します。
全ての研修をレベル4の基準で行うのは難しいため、各研修それぞれに応じた評価レベルの設定、また奥行を出すための工夫をすることが重要です。
4段階評価モデルを活用して、研修の質を高めていきましょう!
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